業転玉を仕入れるなという元売りの根拠が崩れた
業転玉とは石油製品の製造過程で出た余剰なガソリンのことで、業者間で転売されるものを指していう。ノンブランド品、無印タンクローリーなどがこれにあたる。対となるのが、元売り会社が特約店、系列販売店に卸している商標のついたガソリンを指して系列玉という。
この業転玉を仕入れることを禁止されていた系列特約店・販売店が今回のハイオク混合問題で怒りの声を上げているというのが下記の毎日新聞の記事だ。
公正取引委員会によるガソリンの取引に関するフォローアップ調査報告書によると
系列特約店等における業転玉の取扱い
元売は,系列特約店及び系列販売店に対し,特約店契約や商標使用許諾契約によって,当該元売の商標を掲げる系列SSにおいて自社が出荷したガソリンのみを販売することを義務付けるとともに,①商品の誤認又は他社のガソリンと混同を生ずるおそれのある行為,②自社の商標等を用いて他社の石油製品を混合したガソリン又は他社のガソリンを販売する行為,③商標等に関する元売の権利又は信用を侵害する行為,④他社のガソリンで当該元売が販売するものと同種又は類似の商品の販売行為等を行うことを禁じている。
元売は,その理由として,①元売のマークは商標であり,元売ブランドを形成する重要な要素であるため,そのマークの下で自社が出荷したガソリン以外を販売することは商標権の侵害に当たること,②他社のガソリンとの混合を認めると,品質に変更がないことを確認することができなくなってしまうので,品確法の趣旨に反する結果となるおそれがあることなどを挙げている。
つまり他社のガソリンを混ぜると商標権侵害である。また品質管理、保証が行えなくなるというのが系列特約店・販売店に業転玉を仕入れ販売することを禁止する理由となっている。では契約先の業転玉を仕入れれば問題なく安く仕入れられるのではと思うとそうではないらしい。
元売は,従来は,自社が出荷した業転玉についても,他社のガソリンと同様に,自社の系列特約店及び系列販売店が購入・販売することを制限していた。しかし,平成25年報告書を踏まえ,現在は,石油製品流通証明書等により自社が出荷したものであることを確認できるガソリンであり,かつ,自社製品以外のガソリンと混合されるおそれのないものについては,それがどのような流通経路によって販売されたものであったとしても,自社の系列特約店及び系列販売店が購入・販売することを制限していないとしている。
また,元売は,従来は,業転玉の販売行為があったことを把握した系列特約店及び系列販売店に対し,特約店契約や商標使用許諾契約に基づき,①口頭による中止要請,②文書による中止要請,③文書による契約解除の予告,④合意を得られた上で契約解除,⑤合意が得られなかったものの契約に基づく契約解除などの措置を行うことがあり,軽微な措置では業転玉の取扱いをやめない場合に段階的に厳しい措置が適用されていくことが多いものの,直ちに厳しい措置を適用することもあり得るとしていた。しかし,平成25年報告書を踏まえ,現在は,自社製品以外のガソリンを自社の系列特約店及び系列販売店が購入・販売したことを理由として,一方的に,取引の停止,給油所の運営委託の解除,今後の取引に影響があると受け取られるような通知を行ったりすることなどにより,系列特約店及び系列販売店に対して不当に不利益となるような行為は行っていないとしている。
この通り、公正取引委員会による平成25年の報告書以降になってから業転玉を仕入れることが解禁されている。この報告書に至ったのも全国石油商業組合による訴えが大きかったものと思われる。しかし、これら公正取引委員会の調査はレギュラーガソリンについてであり、ハイオクは含まれていなかったのが今回の問題の発覚の遅れになった。
レギュラーガソリンの業転玉購入販売が解禁になった後も、元売りとの関係や商道徳を重視して系列玉のみの仕入れにこだわる販売店も少なくなかったという。
そして今回の20年続いたハイオク混合問題である。特約店・販売店にはレギュラーガソリンの業転玉すら商標権や品質保証を理由に他社製を禁止しておきながら、元売りは独自開発を謳うハイオクガソリンすら混合・バーター取引を行っていたというのである。
もともと混ざったものを売って置きながら業転玉で混ぜるなという。これが裏切りでないというのならどれが裏切りなのかと問いたくなるダブルスタンダードっぷりだ。謝罪要求をHPに記載する販売会社も現れている。
まとめ
これらの事実は消費者はもとより、系列特約店・販売店から元売り各社への信用を引き剥がすのに十分なものだ。ハイオクを入れる車に乗るユーザーはそれなりにこだわりがあったりする人も少なくない。私自身、レギュラー車に乗っていてもオイル交換や整備の度にエンジンの洗浄になるならと、ハイオクをしばらく入れたりしていた。
基準を満たしてさえいればハイオクの違いが分からないからいいというわけではない。消費者は販売側の宣伝や説明を信用して購入しているのである。食品の産地偽装もそうだが、その信用こそがブランドなのだ。信用こそが付加価値であり、価格差を埋める決め手となる。今回そのブランドが残ったのは昭和シェルのハイオクと、当初から誇大広告を出していない太陽石油の2社だけだ。これからは石油会社の宣伝を冷めた目でしか見れそうにない。
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