ハイオク混合問題は何が問題?消費者に伝えないバーター取引(1)

時事

各社独自のハイオクとして売られていたが中身は同じ?

毎日新聞が6月27日に報じた記事は非常に大きなスクープ内容だった。『ハイオクガソリン、実は混合 「独自開発」のはずが…20年前から各地で』という見出しで長年閉ざされた業界の内実を明るみに出した。

レギュラーと違ってハイオクのバーター取引はなぜ問題なのか

まず市場で販売されているガソリンの基準を見てみると、JIS規格(JIS K2202)では、オクタン価で、プレミアムガソリン(いわゆるハイオク):オクタン価96以上とレギュラーガソリン:オクタン価89以上に分類されている。また、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)を遵守する必要がある。

そしてレギュラーガソリンに付いては国内で価格差はあれど、元売り各社は性能差を宣伝して販売していない。それは精油施設は違ってもほぼ同品質の物を作っており、物流効率を上げるためにバーター取引を行うなど、元売会社が共同出資して設立された会社の油槽所を共同で利用する共同油槽所化を推進しているからだ。

このバーター取引と共同油槽所をハイオクガソリンでも扱っていたというのが今回の問題だ。

ハイオクは元売り各社が下記のようにオリジナルブランドとして販売している。

コスモ石油スーパーマグナム
出光出光スーパーゼアス
キグナス石油α-100
エネオスエネオスハイオク
昭和シェル石油Shell V- power
太陽石油SOLATOプレミアム
出光と昭和シェルは2019年に経営統合しているが、SSは各ブランド継続している。

太陽石油を除いた元売り各社は長年広告やHPでハイオクの独自性と付加価値を宣伝していた。また業界団体である石油連盟では「ハイオクはそれぞれ独自開発され独自ルートで供給している」と紹介していた。

しかし、この独自性はバーター取引やタンクの共有化で失われていた。コスモ石油やキグナス石油に至っては、

エンジン洗浄効果のある添加剤が使われていると宣伝しておきながら実際には含まれていなかったという虚偽の宣伝を長年行っていたとして、景品表示法違反(優良誤認)の恐れがあるとしてコスモ石油がHP等を修正し、

コスモがハイオク虚偽表示 洗浄添加物なし、10年以上サイトに 景品表示法違反恐れ | 毎日新聞
 石油元売り3位のコスモ石油が「スーパーマグナム」のブランドで販売するハイオクガソリンについて、エンジンの汚れを取り除く添加剤が入っていないのに10年以上、「使い続けるほどにきれいにしてくれる」と虚偽の性能を公式ホームページ(HP)に記載していたことが判明した。同社は毎日新聞の取材に記載内容が不適切

オクタン価が100と宣伝していたキグナス石油のハイオクガソリンα-100もまた実際は100未満ということで虚偽の宣伝として4月にHPを修正している。

キグナス、ハイオクを「オクタン価100」と虚偽の宣伝 指摘受けHP修正 [写真特集1/3] | 毎日新聞
修正後のハイオクガソリン「α-100」の性能表記=キグナス石油販売のHPから

またこの件についてそれぞれが釈明のプレスリリースを出している。

ココロも満タンに コスモエネルギーホールディングス
コスモエネルギーグループの公式サイト。会社情報、事業情報、投資家情報、採用情報や、エネルギーの未来をつくるCOSMOの取り組みをご覧いただけます。
ニュース一覧 | キグナス石油

なお昭和シェルの「Shell V- power」のみは独自ルートで直接配送しタンク共有もバーター取引も行っていないということで、宣伝通りの生産販売をしている。

つまるところレギュラーと違ってハイオクは各社及び石油連盟が独自に生産、販売を行っていると明言しており、それが虚偽だったというのが問題なのである。ハイオクの品質が基準を満たしているかいないかは別であり、その基準に付加価値を付けることで元売り各社の商品の差が出ていると消費者に思わせていたのがポイントだ。

以下は2020年7月17日に行われた石油連盟の記者会見での杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)と毎日新聞記者のやりとりの抜粋

――会長に伺いたい。消費者はハイオクがバーターとか共同タンクを利用しているという実態を知らない人の方が圧倒的に多いと思う。車を大切にしている人やブランド看板を目指して給油している人もいると思う。消費者に対してこれまで言ってこなかったのは、裏切り行為とは思わないか

 ◆ハイオクに限らず、バーターはすべてしておりますんで、そこをしっかり消費者にお知らせしなかったと。必要があればお知らせしなければいけないだろうと思いますけど、これが裏切り行為かというと、我々はバーターであろうが、自社の商品規格に合ったものということでちゃんと、それを管理し、保証しているわけでありますので、これは決して裏切りにはならない。

 バーターをしていることを言ったか言わないかという問題はあるかもしれません。それは必要があれば、ちゃんと開示していきたいと思います。バーター品で買っているのか、自分のところで作って売っているのか、規格は同じなわけです。自社の商品規格は。従ってこれは裏切りにはならないと思っております

ハイオク混合出荷 「消費者の裏切りにはならない」 石油連盟会長、一問一答 | 毎日新聞
 元売り各社などでつくる業界団体「石油連盟」の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は17日の定例記者会見で、ハイオクガソリンの混合出荷問題などについて、毎日新聞の質問に答えた。主なやり取りは以下の通り。

杉森務会長はバーター取引を言ったか言わないかが問題であるが、商品規格に合っているため消費者に対する裏切りにはならないと言っている。しかし、先程述べたコスモ石油とキグナス石油の虚偽宣伝はどう受け止めているのだろうか。この2社が宣伝していた通りの性能の物を混ぜたり、バーター取引しても同規格品と言っているのだろうか。それともこの宣伝が虚偽だと知りつつ同規格品だとして扱っていたということだろうか。

以下はやり取りの続きである。

 ――そこがよくわからない。ENEOS、出光興産、コスモ石油の広報に聞いても、他社製を出荷しようが、1対9で混ぜようが、5対5で混ぜようが、自社の製品規格を満たしているというわけですね。3社の品質は全部同じということなのですか。

 ◆そのように考えていただいた方が早いと思います。

 ――それでいいのですか。

 ◆それほど大きな品質の差はございません。

 ――差はないのですか。

 ◆国で決められた規格があって、各社それぞれ決めた規格があります。それはそんなに大きくかけ離れていないということで、それをちゃんと確認した上で自社商品として出荷しているわけです。

 ――3社は同品質ということでいいのですか。

 ◆ほぼ。

ENEOS、出光興産、コスモ石油の3社はほぼ同品質と会長は認めているのだ。3社のハイオクはコスモ石油以外「エンジンをきれいに保つ」清浄効果を宣伝しており、コスモ石油は「使い続けるほどにエンジン内をきれいにしてくれる」という洗浄効果であり、異なる添加剤であるはずにも関わらずだ。もちろんコスモ石油が販売SSに卸した時に洗浄効果のある添加剤を加えているというなら話は別だが、そもそも洗浄効果のある添加剤を加えていないとコスモ石油が語っている。つまり会長はコスモ石油やキグナス石油が虚偽の宣伝を行っている事を知っていたという事になる。当然会長だけが知っているわけではないだろうが。

これは2社の虚偽を知ったうえでバーター取引をしているならば、商道徳的に問題であり、虚偽を知らず洗浄性能の添加剤が入っていると思ってハイオクを共有、取引していたのならこの添加剤が入っているハイオクと入ってないハイオクが卸される事となり、完全に別商品が同じ名前で販売される事になりやはり問題なのだ。

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